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ゼロからさきへ

「知りたい!」「面白そう!」「なになに!?」に溢れた毎日

シンゴジラは潔さを武器にした:「現実vs虚構」を選択し「分かりやすさ」を切り捨てた

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ゴジラ、倒れて!」

と思うと同時に、私はゴジラを思って涙寸前でした。

ゴジラの生き様がなんとも切なくて。

 

 

あれもこれもと欲張り過ぎるとよくありません。

作品はいつだって盛り込みすぎると破綻します。

そんななか、シン・ゴジラは多くのものを盛り込みました。

 

台本の厚さが通常の1.6倍という情報量の多さ

・研究しつくされた台詞

自衛隊の行動のリアルさ

・法や国際情勢によって制限される政府の動き

・300人という登場人物

 

しかし、シン・ゴジラは破綻してはいませんでした。

それは節度を持っていたからです。

拾うものは広い、そのために切るべきものは切っているのです。

 

シン・ゴジラは、明確な「軸」を持って作られた作品だと思います。


判断の基準となる言葉がある組織は強い

私もものづくりを行う者です。映画ではなく、これからお話するのは合唱ですが、複数でものづくりを行うという点では同じです。

 

そこで必要なのは理想像を描き共有することです。どんなに声が良くて技術のあるメンバーを集めても理想像が異なりバラバラの行動をしていては、最上の演奏はできません。

むしろ技術に劣るところがあっても、みんながひとつのところを見据えている演奏の方が感動的だったりするものです。

 

みんなで共通の理想像を持てれば凄い力を発揮するというのは国単位でも起こる現象です。

文明開化の頃や戦後のあの頑張りは、「国が大変だ」「生活を立て直さなくては」という理想像があったからでしょう。

 

理想像は個人の行動を左右します。

 

判断の軸となる言葉があれば、組織は身軽になる

たとえば私の高校の合唱部では、自分たちの満足いく演奏をするために「頑張るのは当たり前。無理をしろ」という発想が根付いていました。

(大人になった今改めて言葉にすると、なんとブラックな……と思いますが笑)

 

そうすると、「疲れたな、少し休憩しようかな」「この日は部活をやるのか、やらないのか」というような選択は「練習する!」という判断が自ずと導かれます。

こういった小さな選択に時間を割く必要がない・悩みが生まれないというのは大きなアドバンテージです。組織の身動きが軽くなります。本当に必要な決定のために時間を割くことができます。

(分かりやすいかったのでこの例を用いましたが、つくづくブラック企業さながらですね笑)

 

この意味で、判断の基準となる言葉がある組織は強いのです。

 

必要だから取り入れるし、必要なければ切り捨てる

シン・ゴジラは、「面白い日本映画を作る」という理想のもと、その方向性は「現実vs虚構」に定められていました。

 

だから、リアルさはとことん突き詰める。

そのために分かりやすさを犠牲にした部分もあったと思います。

 

しかし、不用意に分かりやすさを優先しなかったために得たものは大きいです。

たとえば、ゴジラを含めキャラクター一人ひとりに、「その人物に似合わない行動」がなかったこと。

「リアルを突き詰める」という軸が一本通っていたことが、確固たる世界観と登場人物を仕立てあげました。

 

欠けたところを補いたくなるから、見終わってなお執着する

「現実vs虚構」のために他の要素は潔く切り捨てる。

これは、作品そのものを軸の通ったものにしましたが、他の影響もあります。

 

切り捨てられた部分、つまり欠けている部分が気になって仕方がないのです。

 

気になる部分は人それぞれの琴線によるでしょう。

 

私の場合はゴジラの心境でした。

どうして都心部を目指して「移動」しているのか。

ゴジラは能動的な攻撃はしていませんでした。

ひどく過剰だけれど、ゴジラに反射的な防衛以上のものはなかったように見えました。

あの「Who will know」が流れた放射線シーンも、叫び声といい光を放つ様子といい、なんとも切なげでした。

 

その姿に私は悲しいヒーローの結末を重ねました。

敵の猛勢に身体も心もボロボロになりながら、それでも守るべきもののために身体を張って闘いながらに倒れてしまう。

そんな運命に揉まれてなすすべないゴジラが切なくて仕方がありません。

 

これは情報が欠けていたからこそ、視聴者一人ひとりが発想を膨らませられる部分です。

 「現実vs虚構」を突き詰め他を切り捨てた庵野秀明監督、さすがのお手並みです。

 

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