ゼロからさきへ

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羽生さんの「仮説の強度」が凄かった

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この1年ほど、棋士の羽生さんが気になっています。

 

きっかけは、その異次元な逸話や、フィギュアスケートの羽生くんと画像比べまとめサイトなどで何度か羽生さんを見たことです。

 

その逸話は笑えるほど凄くて、また結果を生み続ける彼の言葉は深く刺激的で、でも面白いエピソードがあってなんとなく親しみやすくて、羽生さんが気になっていました。

 

 

羽生さんに会いに行ってきた

ということで、先日、東京大学物理学教授の酒井邦嘉さんと、将棋棋士羽生善治さんの対談を見に行ってきました。

 

「将棋脳と人工知能ー人間はどこまで人工知能に勝てるのか」

www.asahiculture.jp

 

 

羽生さんは知識量が凄かった

内容は、タイトル通り「人工知能」についてです。

電脳戦があったりと将棋は何かと「人工知能」に縁がありますが、そうだとしても羽生さんはいろいろなことをご存知でした。

 

Pepperの開発担当者が「Pepperの学校を作らなきゃいけない」言っていた。過去に、初めてPepperを大勢の前に出したらパニクって操作する人の言うことを聞かなくなったということがあった。Pepperにも教育が必要ということらしい。

 

といった現場の担当者の声から、人工知能の構造の説明までそれは分かりやすく解説されました。

 

 

羽生さんは「もし~だったら」の先を考える強度が凄かった

途中、「ピジン言語がクレオール化する」ということをテーマに話す一幕がありました。

 

ピジン言語とは、違う言語を持つもの同士が意思疎通のために生み出すその場しのぎの言葉のことです。言語体系は未成熟。文法は単純で語彙は少ない。急に異なる文化を持つ者同士が生活をともにするようになったという場合に生まれるものです。

 

一時の交流ではなく、そこでの生活が営まれれば子供が生まれます。その子供たちはピジン言語を母語とすることになります。子供たちはピジン言語の言語体系を成熟させます。文法を複雑にし語彙を増やして表現できることを増やしていきます。これがクレオール化と呼ばれるものです。

 

このクレオール化は小学校低学年までの能力といわれています。その頃までは人は「自ら学習する力」がとても強いそうです。

 

この対談では、酒井教授から「親たちは片言の英語しか話せないのに、子供たちはそれをクレオール化させてきちんとした英語を話すようになった」という例が紹介されました。

 

これに対して羽生さんは

「もしかしたら子供たちは、親たちが話した言葉だけからではなくて、それに対する周りの反応『あの言い方ちょっと変よね』と言われているようなことも聞いていて、それで正しい英語の方向性へ近づいていったのかもしれないですね」

とおっしゃいました。

 

 

熟考の上ではなく、食い気味に。

 

 

酒井教授の問いに「きちんとした言語なら分かるけど、なぜ『きちんとした英語』になるんだろう? 多くの偏った事例の中からきちんとした部分を正確に導き出せるのはなぜだろう?」と私は疑問が湧きましたが、羽生さんは疑問の先まで一気に発想を膨らませていたのです。

 

 

羽生さんの思考力はとても魅力的でした

さすが棋士、幾通りもの仮説を瞬時に考えるということが習慣になっているということなのでしょうか。このシーンだけでなく「~だったら、~になって、~になるかもしれないですね」ということを仔細のイメージを添えて瞬時に発言されます。

 

発想を幾通りも膨らませること、その中から確かそうなものを選択すること、それを明瞭に伝えること、その全ての能力の質が高くかつスピーディーで驚きました。