ゼロからさきへ

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ワインセミナーに行きました:人は感覚を覚えられないから言葉付けをする

f:id:edausagi:20161010152908j:image ワインが好き。美味しい。

でも、よく分かんない。

 

カタカナ語が氾濫してて、それが産地なのか品種なのかも分かんないし、

通の人やソムリエから出てくる「若草っぽい」とか「ベリーっぽい」とかいう感想もよく分かんない。

ワインを自分で選べるようになりたいけど、途方もなく感じる。

 


という遠く遠く感じるワインへの距離感を少しでも縮めるべく、
先日、ワインのセミナーに行ってきました。

 

 

ワインは元来、人間にとっても身近なお酒

そこで教えてもらったのは、主にワインの仕組みです。

 

ワインはブドウさえあれば作れる

 だから、ブドウが作られる地域にならどこでもあるし、世界で一番簡単で古くからあるお酒。

 

・ワインは農作物

 だから場所によって香りや味が変化する
 たとえば、温かい地域のブドウは甘いから、アルコール度数が凝縮された味の仕上がりになる

 

などの基本のキ。

 

こうして概要を知り、ザックリとした判断軸を得て、ワインとの距離は少し縮まりました。

 

 

あれ!? 分かる!

そして、セミナーはテイスティングに差し掛かり、いよいよあの難解な形容表現が登場します。

 

香りについて

・青りんご・トースト・ナッツ・バター・野ばら・コーヒー

 

味について

・シャープ・ふくよか・はつらつ・力強い

 

こんな表現を使って赤・白2種類ずつのワインについて解説。

ラベルを隠して注がれたワインを、どちらか予想するというテイスティングが行われました。

 

 

一口目。まったく分かりません。

違いは分かる。しかし、何の言葉もイメージも連想されません。

 

しかし、数度交互に口に運ぶうちに、「あれ? なんとなくこっちが若草っぽいかも」というふうに、ある言葉が味と結びつくようになったのです。

 

解説時に与えられたすべての言葉に反応できたわけではありません。いくつかの言葉です。

けれど、この「感覚が言語化された」という体験に私は手応えを感じました。

 

 

 難解な形容表現、よく考えたら私には身近な感覚だった

「感覚を含めた形容しにくいことを言語化する」ということ。

それは日頃私が大切にしていることです。

 

私は人に伝えることを仕事にしています。

そのなかで、大切にしているのは

「挑戦してみた! できた!」という瞬間的な体験そのものではなく、

「分かった! 次に生かせそう!」という持続的な変化です。再現性です。

 

そのために言葉を用います。

人は、感覚を感覚のままでは覚えられません。

感覚を、感動で終わらせるのではなく学びにするために、言葉が欠かせないのです。

 

感動を得た直後に「あの感じ!!」で思い出せた興奮やイメージも、1日経てば鮮度を失います。

この鮮度をつなぐために、再現性を得るために、言葉を設けるのです。そして、その形容表現は関わりのない者から見れば難解です。

だって、その再現性はその体験を共有したメンバーだけにしか通じないのですから。

 

 

体験を共有した間柄に芽生える共通言語

たとえば、音楽の場である部分の音楽付けをするために、実際に歌って示すのと合わせてこのような言葉付けをすることがあります。

「映画のオープニングにあるようなカメラワークで、最初はグーっと地面に寄っていて、それがふわっと宙を映して、そのまま雲に突入して、その雲を抜けると高い空があってそこに漂う感じ」

こうすることで、その場にいるメンバーではこの表現に対して再現性を得ることができます。

 

しかし、この日お休みだったメンバーに、次の練習時に何の説明もなく「あのカメラワークのかんじで!」と言っても、通じるわけはありません。定義付けをしたその場に居なかったのですから。

 

 

長い時間、多くの愛好家によって言語化が育まれたワインの世界

ワインも、規模が大きいだけでそれと一緒です。

古代ローマ人よりも前の時代の人から現代人に脈々と、ワインに関する形容表現がつながれてきました。それだけ広く・深く、そして確固たる強度を持つために、一見さんお断りな印象を持ってしまうのでしょう。

 

けれど、時代という観点でも地域という観点でも多様性に揉まれたシステムは、シンプルかつ的確であるものが多いように思います。そう考えると、ワインの世界は一度浸れば肌なじみしやすいものであるかもしれません。

 

そう考えると、「ワインを飲むという行為」と「彼らがどういう言葉付けをするか」をいっぺんに経験する機会を積めば、意外にサクッとワインの世界に飛び込めるような気がしてきました。

 

なんだか、若者言葉を覚えるようなものだなーと思いました。