何を言うかより誰がどう言うかだから
私は「伝える」ことを仕事にしています。ときには歌うこと。ときには歌唱指導。ときにはお話の仕方講師として。
お話の仕方の講座はマナーのお教室で行っています。そこに立つときは気をつけていることが多くあります。
内容そのものというよりも、その見せ方と伝え方に。
講座では「何を言うかよりどんな方がどういうふうに言うかの方が問われることも多い」とお伝えしています。
そのメッセージそのものが私を縛るのです。
まず、内容の見せ方。
発声や発語という歌唱指導をするときとかぶる要素です。しかし目指すべき理想像は違います。
たとえば歌なら、そこにいろんな感情を乗せられるようニュートラルな発声や発語を基本とします。
一方、マナー教室のお話の仕方では、お相手に好意が伝わることが主眼です。ですので明るく朗らかで品のある発声や発語を目指します。
それから、伝え方。
歌ではとにかく伝われば大丈夫。「できそう!やってみよう!」と思っていただけることが大切です。ときにハッパをかけることもあります。
それに対してマナー教室では、まず私が美しい人であらねばなりません。言葉遣い・立ち居振る舞い・共感を大切にするコミュニケーション……お話の仕方をお伝えしている私がそれらを実行できていないと聞き手の納得感は得られません。言行一致。これにつきます。
マナーのお教室でデビューする前から、人にお伝えする経験があり、その手応えも感じていました。
けれど、「マナー教室でお話の仕方講座を担当してくださいませんか?」と依頼を受けたとき即決はできませんでした。
「マナー教室にそれにふさわしい伝え方ができるのか……?」と迷ったものです。
そんな私も回数を重ね少しずつ成長。
前回の講座での生徒さんからの質問内容が変化したことで、自分の変化を実感しました。
最初の頃は発声や発語のことばかりだったのが、言葉の使い方についても質問をいただくようになったのです。
人は「この方は答えを知っているだろう」という期待感なしにこういう場で質問を口にしません。
揚げ足を取ろうとするのであれば別ですが。
言葉遣いや敬語の使い方という歌よりもマナーに近い部分に質問をいただけたのが嬉しかったです。
期待をいただき、それを満たして「ありがとう」に繋げられるよう鍛えていきます。